電化リノベーションで省エネ・快適住宅に

06/08

雫石町・Y邸
●Y邸基本データ
施工─2003年8月
延床面積─約60坪
家族構成─7人
(両親+若夫婦+子ども3人)
相当隙間面積─1.4cm2/㎡
工期─4ヶ月

 

 電化リノベーションで生まれ変わる前のY邸は、築28年の木造住宅でした。大工さんに丁寧に造られていたものの、冬になると家中の窓は結露と凍結で外が見えにくくなり、寝室の朝の温度がマイナス1~2℃ということも珍しくないほどでした。9室あった居室で使用していた開放式ストーブと給湯を合わせて、厳寒期には月700リットルもの灯油を消費していたといいます。

 何度も新築を考えたものの「おじいちゃんの建てた家を壊したくない」という思いが強く、最終的に選択したのが「電化リノベーション」でした。その決め手は「住み慣れた空間をそのまま維持できること。新築より安価な費用で済むこと。思い出が残る柱や梁などをそのまま利用できること。電化は子どもにも両親にも安心なこと。ヒートショックによる脳卒中などの予防効果も期待できること」だったと、ご主人は話します。

 断熱改修工事のみとした2階にご両親が住み、若夫婦世帯は向かいの車庫に仮住まいをしながら工事がスタート。解体、構造・耐震補強、断熱・気密工事を経て、各居室に蓄熱式電気暖房器を配置し、キッチンにはクッキングヒーター、給湯用に370Lのエコキュートと、オール電化住宅に変身しました。

 8月の入居前に実施した気密測定試験では、次世代省エネルギー基準の北海道レベルを大幅にクリア。当初1300万円だった予算は、追加工事の依頼が重なり、最終的に1600万円弱になりましたが、建て替えと比べるとかなり割安な予算で済みました。

 高断熱・高気密の新築同様の住み心地に「真夏でも涼しく、空気がきれいに感じます。間取りも大幅な変更がないので、従来の感覚のまま住みこなせることができ、家族にも好評です」とご主人も満足の様子です。この冬、家族で初めて経験する「暖かさ」が待ち遠しい様子でした。

電化リノベーションシステム

06/08

計画の立案から完成するまでのシステムチャート

1 施工前
夏は蒸し暑く、冬は寒くてジメジメ。老朽化して深いな状態の住宅…。できるだけ躯体を残しながら買いたいするための足場工事などを経て、リノベーションの準備に入ります。
2 解体工事
利用できる構造材や一部の躯体を残して解体します。構造をチェックし、腐朽した構造材をすべて取り換えます。

●床の解体
従来の住宅の床下のほとんどは土のままになっています。防湿対策がなされていないため、大抵は土台もボロボロに腐り、カビ臭いにおいが鼻につきます。

●天井の解体
腐れのひどい断熱材をはがし、構造の状態を確認。「火打ち金物」を取り付けて、揺れなどの振動に対する強度を高め、構造を補強します。

●外壁の解体
壁をはがして取り出した断熱材。壁内に発生した結露を吸収し、カビて真っ黒になっているなど、本来の断熱性能を発揮できていないケースがほとんどです。


3 床下改修
床下からの湿気をおさえるため、土間整地をしたあと防湿シートを貼り、土間コンクリートを打ち込みます。床を支える束も新しいものに交換します。
4 構造補強・耐震補強
腐食した土台や柱はすべて乾燥剤に交換します。主要な構造材には、反り曲がり、くるいが少なく、引っ張り強度、圧縮強度の高い集成材を採用。外壁にはOSB合板を貼り、筋交いや柱を金物で補強します。OSB合板を貼ることで強度は筋交いの1.25倍になります。
5 断熱・気密工事
屋根や床下など建物全体を断熱材でぐるりと包み(外断熱工法)、新築同様の断熱・気密性を確保します。

●外壁の断熱
OSB合板を貼った上から「硬質ウレタンボード」を貼り付けます。硬質発泡ウレタンの断熱性能はグラスウールの約2倍。湿気にも強い素材です。

●基礎の断熱
基礎部分にウレタンを貼り付け、最下部はシロアリ防止も兼ねて現場発泡の断熱材(硬質発泡ウレタン)を吹き付け、断熱・気密性能を確保します。

●屋根の断熱
細部のすき間チェックした上で、壁と同じ「硬質発泡ウレタン」をすき間なく吹き付け、充てんしていきます。

●窓の断熱
住宅全体から逃げる熱の多くが、窓から逃げる熱です。窓の断熱・気密化は重要なポイント。断熱・気密性の高い樹脂サッシを使ったペアガラスに交換します。
6 気密測定
断熱・気密工事を終えたら、ボード貼りや内装工事に入る前に、気密測定を行います。相当隙間面積は次世代省エネルギー基準をクリアしていることを確認します。
7 内装工事、設備の交換・導入
新しい間取りに応じて、内装工事がスタート。十分使える柱や梁の一部や造作部分はクリーニングしてそのまま使用します。蓄熱式電気暖房器、電気温水器、クッキングヒーターなどの電化システムを導入後、24時間換気システム本体も設置。新築同様の快適な室内空間が生まれます。
8 外壁施工
通気銅縁を施工し、外壁を取り付け、いよいよ最終工程に入ります。
9 完成
内装・外装工事が完了したら、全体の検査をした上で引き渡します。住まいの状態にもよりますが、工期は通常3ヵ月程度です。

電化リノベーションのメリット

06/08

深夜電力の利用で経済的なランニングコストを実現


 基本的に、電化リノベーションはどんな構造・工法の住宅でも可能ですが、いずれの場合も高断熱・高気密構造であることが前提条件となってきます。断熱・気密性が悪い住宅では暖房負荷が大きくなり、ランニングコストも割高になってしまいますし、そのような住宅では壁内結露などを招いてしまい、建物自体の耐久性も望めず、長い目で見ると結局は建物の維持・修繕費の増加という事態を招きかねません。

 高断熱・高気密化を前提とした電化リノベーションの経済性は、新築の高断熱・高気密住宅の場合とほぼ同じです。建物を全館暖房をしたとしても、「やりくりナイト」(時間帯別電灯契約)で計算すると24時間暖房、給湯、クッキングヒーターなどを全て電気でまかなった場合、年間を平均した1ヶ月あたりの電気代は1万6000円ほど。厳寒期の1月でも3万2000円程度で済むという高い経済性を誇ります(平成14年度盛岡営業所管内・建築面積40~44坪の平均)。現状での暖房、給湯、調理にしようする灯油代、ガス代、電気代を合計して計算してみると、その割安感に驚かれるはずです。

 電気の契約には、大別して従量電灯、深夜電力、第二深夜電力、時間帯別電灯の4種類があります。「従量電灯+深夜電力」契約は深夜蓄熱機器(※)の使用電力のみが割安となる契約で、「やりくりナイト」は23時から7時(または22時から8時)までの使用電力が、昼間の約70%引きという料金体系でカウントされ、オール電化住宅・電化リノベーションでは一般的な契約となります。

 「やりくりナイト」の場合、昼間の電気は反対にやや割高になってしまいますが、タイマーなどを上手に使って夜間時間帯に炊飯や洗濯、自動食器洗い機などを使う工夫をしていけば、経済性はさらに高まります。近年、マンションやアパートなどの電化が急速に伸張しているのもそうした背景があるからです。2000年10月からは「やりくりナイト」のメニューも3種類になりましたので、それぞれの生活スタイルに合わせた制度を選択するといいでしょう。

※深夜蓄熱機器には電気温水器や蓄熱式電気暖房器、蓄熱式電気床暖房器等があります。

こんなに違う!電気料金

    昼間時間帯   夜間時間帯
全自動洗濯機 1日で 4円(290w・35分) 1円(290w・35分)
100円で 約13時間 約59時間
掃除機 1日で 8円(540w・35分) 2円(540w・35分)
100円で 約7時間 約32時間
電気炊飯器 1日で 12円(600w・50分) 3円(600w・50分)
100円で 約6時間 約28時間
生ゴミ処理機 1日で 33円(770w・105分) 8円(770w・105分)
100円で 約5時間 約22時間
食器洗い乾燥機 1日で 28円(900w・75分) 7円(900w・75分)
100円で 約4時間 約19時間

・機器ごとの電気料金は、一般ご家庭の標準使用例を想定して算出。
・料金端数、稼動時間端数は四捨五入で計算。
・電気料金は「昼間時間帯24.85円/kWh、夜間時間帯5.85円/kWh」で計算。

時間帯別電灯A

やりくりナイト8

「夜11時から翌朝7時まで」の夜間時間帯(8時間)の電気が割安になるお得な料金メニューです。

■やりくりナイト8の料金

区分単位料金単価
基本料金 6kVA以下の場合 1契約 1,365円00銭
6kVAをこえる場合最初の10kVAまで 1契約 1,890円00銭
上記をこえる 1kVA 315円00銭
電力量料金 昼間 最初の90kWhまで 1kWh 18円63銭
90kWhをこえ230kWhまで 1kWh 25円52銭
230kWhをこえる 1kWh 27円43銭
夜間 1kWh 7円18銭

電化リノベーションという新システム

06/08

暖房給湯調理の熱源を電気で一本化する発想

 新築でもオール電化住宅が幅広くユーザーに浸透し、岩手県内でも2003年までに約4000戸ものオール電化住宅が建てられています。その背景には、住宅の高断熱・高気密化や高齢化社会の進行、ライフスタイルの多様化などがあげられます。特に住宅の高断熱・高気密化は、快適な温熱・空気環境を実現しながら熱源を一本化することで、快適性・利便性・安全性・経済性といった、住宅に求められる条件を一度にクリアできるメリットがあります。  
 例えば、蓄熱式電気暖房器、電気温水器、クッキングヒーターなどの光熱費が一本化できることも、オール電化ならではのメリット。灯油などの燃料補給の手間の省略や手入れの容易さ、20年以上ともいわれる機器の耐久性、そして割安な深夜電力料金「やりくりナイト(時間帯別電灯契約)」が利用できることなども、次世代に求められている住宅の理想として評価を受けているわけです。
 既存住宅の高断熱・高気密化を図ることを前提に「リノベーション」を考えれば、中古住宅でも新築同様にオール電化が可能となります。いわゆる「電化リノベーション」と呼ばれるものです。すでに、岩手県内でも実績が生まれており、なかには従来、1ヶ月で700リットルもの灯油を消費していた中古住宅を電化リノベーションしたことで、暖房・給湯・調理を含め月3万弱の電気代で済んでしまう事例も生まれています(1月・雫石町・延べ床面積60坪)。経済性だけではなく、快適かつ健康的な室内空間に生まれ変わることによるその他のメリットも計り知れません。
 新築ともなると最低限坪単価50万円以上もの費用がかかることから、とりあえず不便になった箇所や古くなった設備を取り替えようというのが、これまでの一般的なリフォームの考え方。これに対して、既存の建物の部材をできる限り再利用しながら、基本性能や機能を高めることで快適性を高め、資産価値を維持し、設備のリニューアルやランニングコストの節約、熱源の一本化までを考えていく「電化リノベーション」は、今後大きな注目を浴びていくことでしょう。

 

 

電化設備の特色
1 蓄熱式電気暖房器
屋内を均一に暖房することで結露を解消し、ヒートショックも予防。輻射熱による暖房は室内全体を蓄熱体とし、温度ムラをつくりません。空気を汚さず、耐年年数も平均20年以上と経済的。

2 電気温水器
蛇口をひねればいつでもお湯が使え、浴槽への湯張りも短時間。火を使わず、給水から湯沸しまで自動運転できます。沸き増しできるタイプもあり湯切れの心配もありません。

3 クッキングヒーター
200ボトルのパワフル火力でどんな調理もOK。油や水蒸気を含んだ空気が舞い上がることもなく、換気も最小限で済みます。煮こぼれてもひと拭きで済む手入れの楽さも魅力です。

「リフォーム」と「リノベーション」

05/31

温熱環境を根本的に解決。健康的で長寿命の住まい

 日本の住宅の平均寿命は20年~30年足らずと、先進国のなかでも最も短いことで知られています。ローン返済の終わらないうちに改修すべき箇所が多くなり、その都度リフォームで対応することが少なくありません。しかし、せっかく古い設備を取り換え、老朽箇所の修繕に費用を費やしても、数年後にはまた修繕すべき箇所が多くなって段階的に費用がかさんでしまい、その10年、20年後には建て替えといった状況を生み出すケースがほとんどです。ある金融機関の調査では、新築後平均19.7年で建て替えのための借り換えが行われているといったデータでそれが示されています。
 そこで近年注目されているのが「リノベーション」という考え方です。「再生・改革」を意味する言葉ですが、従来のリフォームとは異なり、そこには「既存の建物の用途や機能を変更・更新し、性能を向上させる」といった意味も含まれます。


 具体的には、リフォームが(1)一般的には部分的な改修工事や営繕的な工事を指す。(2)根本的なところを改善しないため、建物全体の耐久性の向上までには及ばない。(3)リフォームのその先には最終的建て替えが考えられている...のに対し、リノベーションは(1)改装してより長く使う。(2)耐震性や防火安全性を確保し耐久性を向上させる。(3)社会情勢に伴って変化する建築機能向上。(4)冷暖房に費やすエネルギーの節約につながる...というように既存の建物を時代の変化に対応させ、機能・性能を向上させることで、建築物の資産価値までも高めることが可能になります。
 また予算の面でも、リフォームはその都度十万~百万円単位の金額をかけた工事をしても、その後何度も繰り返し、最終的に建て替えすることになりますが、リノベーションでは新築より少ない予算で、国の次世代省エネルギー基準をクリアする性能を発揮することもできます。また、毎月のランニングコストが大幅に低減するほか、長寿命住宅に生まれ変わることで、環境保護にも大きく貢献できるわけです。

築20年の住宅の今後をシミュレーション

工事内容
改善・適応内容   リフォーム 建て替え
(高断熱高気密)
リノベーション
(高断熱高気密)
建造補強・耐震、防腐、防虫、防蟻 ×
省エネルギー化対応 ×
諸経費大幅削減(税各種、登記など) 0円 215万円 0円
省エネ、全館暖冷房システム対応 ×
24時間計画換気 ×
結露排除、カビ排除 ×
設備・仕上げ材グレードアップ
バリアフリー施工
住宅耐久年数 リフォームの繰り返し、
8~9年で建て替え
50~60年 50~60年
工事費 一般水廻り
500~800万円
2200~
2400万円
増築+全面
改装800~
1600万円

リフォームの発生時期

 既存のリフォームのでは、そこに住まう人の健康に大きな影響を与える温熱環境の改善という視点が全くありませんでした。屋内どこでも適切な温度と湿度が保たれ、24時間きれいな空気環境が保たれることが、快適な住宅の基本条件です。その店、リノベーションでは、次世代省エネルギー基準をクリアする構造体の高断熱・高気密化を前提に、全館暖房・計画換気設備を標準装備。既存の住宅で使用できる部材はそのまま再利用していくため、廃材発生とその処理に関係するコストを削減。費用的には新築と比べて割安となり、家族の思い出も継承されます。しかも、毎月のランニングコストは大幅に削減され、寿命も延びることから、投資価値を十分に感じることができます。
は大幅に削減され、寿命も延びることから、投資価値を十分に感じることができます。

温熱環境という視点

05/31

断熱気密換気暖房という4つの大切な要素

住宅の中が寒い、暑い、過ごしにくいといったことは、私達の健康にも大きな影響を与えます。寒さや暑さを「不快」と感じてしまう時点で、人間の生理は「限界」を訴えていることにもなるわけです。住宅は、人間の生命を守る器であり、外の気候をできるだけ遮断して、安心できる空間でなくてはなりません。

快適で健康的な温熱環境を実現するためには「断熱」「気密」「換気」「暖房」といった要素が密接に関わってきます。建物全体を断熱化・気密化して初めて計画換気や最小限のエネルギーでの全館暖房が可能となるわけです。言い換えれば、省エネルギーで実現する快適・健康的な全館暖房や計画換気の性能は、高断熱・高気密の技術が受け持っているといってもよいでしょう。

 
 せっかく高いコストをかけてリフォームを行っても、従来と変わらない過酷な暑さや寒さの中で、ランニングコストさえも節減できないのであれば、そのリフォームはあくまで「化粧直し」でしかありません。欧米のように、50年から100年以上という建物の寿命を全うさせ、その間のエネルギーを節約していくことはエコロジーが求められる時代の要求でもあります。

 断熱・気密性には、本来中間というものはなく、特に気密性については、、気密化か気密化しないかのどちらかしかなく、中途半端な気密化は、結露被害や換気の弊害など別の障害発生を誘因してしまうケースさえあります。1998年3月には、国の次世代省エネルギー基準が確立されました。しかし、この基準もカナダの国家基準と比較すると、まだまだ低いレベルのものであり、特に岩手のような積雪・寒冷地域を含む地域では、高いレベルの性能が要求されてきます。

 快適で健康的な温熱・空気環境をあわせ持ち、なおかつそうした住環境を省エネルギーで実現できるリフォームには、「断熱」「気密」「換気」「暖房」についての十分な認識と意識を持つことを忘れられません。住宅業界のなかでも、そうした意識を持つ会社はいまだ多くはなく、科学的な視点と技術を最優先しながら、リフォームの腐朽に努める意識が求められています。

温熱・空気環境の計画

  

 「快適性」も、人間が受ける「印象」の1つです。環境条件が変わった場合は「印象」に「感覚」が加わり、この2つの概念価値評価によって、その時々の「感じ方」となります。例えば、熱的な「感覚」は皮膚の温度で決まるのに対し「印象」としては身体全体の負荷状態(ストレス)を反映する総合的な評価となり、色や空間、気持ちの状態など、心理的ファクターも関係します。温熱・空気環境の充実だけではなく、リフォームを考える際には、色彩や広さを含めた空間のデザイン、家族の心理的な志向なども無視できないわけです。 ※参考 ASHRAE(アメリカ暖房・冷房・空調技術者協会 1996年)

既存のリフォームの問題点

05/31

膨大な情報に左右されず、等身大の思いを形にする

建売住宅やマンションなど、これまで住宅という「商品」を比較検討して購入するという意識が強かった日本人ですが、徐々に自分に合わせた住まい方を目指そうとする人が増えています。空間のデザイン、内装、家具選びにとことんこだわり、納得のいく住空間にするリフォームを前提に費用をかけ、中古住宅やマンションを購入し、これまでと全く異なる空間に改修する人たちも増えてきました。

住宅はどうしても、年月の経過とともに古くなります。しかし、古くなったからといって、すぐに建て替えというのでは、費用面でも環境負荷の面でも問題が残ります。改修できるところは改修し、寿命を延ばすことが老朽化を防ぎ、住宅としての資産価値を維持するための第一歩。

  

 しかし、古く汚れた壁紙や使い辛くなった設備の更新、間取りや空間の改善、高齢化に伴うバリアフリーなども大切ですが、そこに住む家族の健康に大きな影響を与えるのは、温熱・空気環境にほかなりません。
 温熱・空気環境の改善なしでは、結露やカビなどの問題も解決されず、それらの問題を放置しておくと、内装だけでなく構造体の腐朽を促進させ建物の寿命は短命化する一方です。屋内の温度差は脳疾患・心臓疾患などを誘因するヒートショックの原因となり、何よりのびのびとした快適な生活の弊害となり続け、汚れた空気が蔓延し換気計画のないままの室内では、アレルギー疾患やシックハウス症候群などの問題を解決できないままです。そうして数年後には結局、建て替えを余儀なくされるといったサイクルを招いてしまうケースが圧倒的に多いことを忘れられません。こうして考えると、これまでのリフォームが単なる「化粧直し」に過ぎなかったことがわかります。価値観を転換すると、予算の配分も根本から異なり、リフォームする優先順位も変化してくるでしょう。

 テレビや新聞の広告、チラシ、訪問販売に至るまで、膨大なリフォーム情報の中で私たちは暮らしています。そうした中で大切なことは、まずは自分の家族にとって何が一番に優先すべきかといった価値観を築くことではないでしょうか。

リフォーム情報の整理

 私達日本人は、住宅や暮らし方といったことについての教育を受けるチャンスが少なかったこともあり、新築やリフォームという時になって初めて、住宅に関することを考えるという人も少なくありません。収集した情報の中から本当に必要な情報を選び出したり、自分のスタイルに編集することができず情報に翻弄されてしまうことが多いのはそのためです。住宅は世界に一つの家族生活のステージです。
 情報はいってみれば「他人の住宅」の事例に過ぎません。情報収集と情報の整理はあくまでも、家族の等身大の生活に即した編集を心掛けることが、実は大切なのです。

リフォームの種類と視点

04/10

予算を考え課題を整理。建物の規則も理解する

リフォームと一口でいっても、目的によって改善する場所はさまざま。目的と予算と照らし合わせながら、自分の家庭に合ったリフォームを考えましょう。
また、一戸建てとマンションとでは、規制される部分も異なりますので注意が必要です。
●一戸建ての場合の規制 ●マンションの場合
1 増築
敷地に対する建築面積(建ぺい率)や延べ床面積(客積率)に関する制限・斜線制限や日陰規制等による屋根の高さや勾配、建物の形に関する制限・隣の土地との境界線や、道路から一定以上の距離をとる事に関する規制などをクリアするプランでなくてはなりません。また屋根裏は通常延べ床面積に含まれていない場合が多く、居室に変更すると客積率の上限をオーバーすることもあるので注意が必要です。

1 部屋
構造が「ラーメン構造」などの場合、建物を支えている柱や梁を削ったり外したりはできません。
タイル壁などの壁を建物で支えている構造も、壁を外したり穴を開けることはできません。

2 間取り
工法によって、構造上取り外せない柱や壁がかかわってきます。
1階と2階を貫く通し柱や筋交いの入った壁は、基本的に取り払うことはできませんので、専門家の診断が必要です。

2 開口部
玄関やドアや窓サッシは、防火性能を併せ持つ共用部分のため、勝手にリフォームできません。ただし防音や気密効果のために、窓の内側を二重サッシにしたり、玄関ドアの内側を塗り替えることは可能。バルコニーのフェンスも共用部分のため、勝手に塗り替えることはできません。
3 エクステリア
都市計画法により防火地域・準防火地域に指定されている地域では、建物の構造や材料を燃えにくい物にするという規定があり、窓やドアの材料に制限を受けることがあります。
その他、床のリフォームは可能ですが、床材を選ぶ際は階下への音の配慮を考え、防炎性の高い床材を選ぶようにします。また、キッチンや浴室など水廻りの変更には規制も多いため、管理組合で保管している配管図面や構造図面を参考に専門家に相談してみましょう。

リフォームの目的と種類

 

温熱環境の改善
 1997年に京都で開かれた地球温暖化防止京都会議での議定書では、今後住宅部門では約300万キロリットル(原油換算)のエネルギー消費量の削減が目標とされ、日本は2008年以降の新築住宅の5割が次世代省エネルギー基準を満たすことが必要とされています。こうした国際的・社会的な要請に応えるためには、既存住宅の断熱改修においても一層の高断熱・高気密化への取り組みが求められます。太陽光利用やヒートポンプ暖房、バイオ技術によるゴミの資源化、雨水、雑排水の浄化利用など、自然・未利用エネルギーなどの利用も、リフォームの視野に入ってくることが予想されています。